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11. あなたの心は傷ついていませんか -エッセイ

「あなたの心は傷ついていませんか」

飛騨千光寺・自由な心の道場・道場生
日本スピリチュアルケアワーカー協会・理事
松谷 寛元

 皆さまご無沙汰しております。在職中および県士会理事在任中は大変お世話になりました、松谷寛元(旧名:寛士)と申します。現在は、岐阜県高山市の飛騨千光寺という真言宗のお寺で生活をしています。こちらへ来てちょうど1年が過ぎました。この間、和歌山県高野山の修業道場で、四度加行という真言宗のお坊さんになるための行を修めてもまいりました。(詳しくは、千光寺のホームページ:http://daien.senkouji.com /の4月9日の記事に載っています。もしよろしければご参照ください。)
現在は、お寺での様々な業務をこなしながら、時々、高山市内の病院などにボランティア参加したりもしています。毎日いろいろなことがあり、さまざまな出会いと別れがあります。
なぜ言語聴覚士である僕がお坊さんの修行をする必要があったのかといいますと、僕は、言葉の機能的な改善よりも、言葉に窮する人々やその周囲の方々が心の健康を取り戻し、心安らかになることの方が大切であると思ったからです。そして、その安心感を得るためには、その人の悩みや苦しみを丸ごと受け止め・丸ごと飲み込み、今まで津波のように感じられた悩みや苦しみが、さざ波のごとく感じられるような、大きな大きないのちの海があることを伝える必要があると思いました。そして、そのいのちの海への道しるべが、僕の場合はたまたま仏教であったということです。
言語聴覚士として働いていた頃、僕には苦手な患者さん・怖い患者さんがたくさんいました。また、その人たちとしっかり向き合えない苦しさが常にありました。また、この人たちに機能改善的なアプローチをするだけの関係もとてもつらかったのです。どんなに機能的には改善しても、この人たちは幸せにはなれない、心から安心することはないだろう、という確信があったからです。
仏教的な見地からみると、究極的には、言語やコミュニケーションの障害というものは存在しません。なぜなら、この世界のありとあらゆるものはコミュニケーションであり言葉であるからです。たとえば、弘法大師・空海の『声字実相義』の中に、以下の有名な詩があります。

五大にみな響あり (五大皆有響)
十界に言語を具す (十界具言語)
六塵ことごとく文字なり (六塵悉文字)
法身はこれ実相なり (法身是実相)
意訳:あらゆるものを構成する要素には、みな音がある。また、その音によって、さまざまな世界にそれぞれの言葉がある。また、その言葉が伝えるさまざまな情報は、ことごとく文字である。そして、それらは、同時に仏そのものに他ならないのである。

つまり、言葉やコミュニケーションというものは、日本語や英語などだけではありません。あるいは表情やしぐさ・身体動作だけではありません。スポーツをしたりゲームをしたり喧嘩したりすることだけではありません。手をつないだりハグしたり、セックスすることだけではありません。ペットを飼ったり草花を育てたり、料理をすることだけではありません。また、人や他の生きものだけのものでもありません。この宇宙を構成するありとあらゆるものが言葉なのであり、仏のあらわれそのものなのです。
この境地から言語障害者あるいはコミュニケーション障害者を見ますと、言語障害者・コミュニケーション障害者と言われる人々は、言葉やコミュニケーションが障害されているのではなく、欠けているのでもなく、実はさまざまな言葉に満ち溢れているのです。また、その人たちが今受けている不利益は本質的なものではなく、一説には137億年といわれる宇宙の時の流れの中で、たまたまあらわれた事象の1つにすぎません。
この境地を感得すれば、言語障害者・コミュニケーション障害者の主訴、あるいは現実的な問題がどのようにあらわれているのか、多重構造的に理解し整理することができます。そして、大半はとても表面的ところからあらわれていることがわかります。ですから、まず心の安定をはかり・心の安心を得た上で、機能改善のためのSTを行なうこともできますし、現実の社会を生き抜くための具体的な方便を考えることもできるのです。しかし現在、言語聴覚士はますます機能改善面だけを重視せざろう得ない国の財政事情にさらされてもいます。
ですから、僕は言語障害者・コミュニケーション障害者だけではなく、言語聴覚士の皆さんの心の状態も気になります。皆さんの心は、日頃の臨床で疲れていませんか?傷ついていませんか?また、あなたには怖い患者さんはいませんか?あるいは、あなたは自分の心の状態を定期的にふりかえり・修復していますか。整えていますか。
僕は、言語聴覚士にも心の癒しや・心のケアを図るためのプログラムが必要だと思っています。もし、悩んでいる方・苦しんでいる方、関心がある方がおられましたら遠慮なくご連絡ください(メール:kangen@r6.dion.ne.jp)。いつでもお待ちしています。


  1. 2011/04/03(日) 09:49:17|
  2. エッセイ

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