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20. 感謝の気持ち -エッセイ

「感謝の気持ち」

梅雨の神様も祝福してくれたらしく、S君の結婚式は晴れだった。参列した新郎新婦の友人達は、今か今かと二人の登場を待っている。たくさんの結婚式に参列しているが、こんなにも参列者がわくわくして待つ結婚式は初めての経験である。

あまりの新婦の細いウエストと可愛らしさは、参列者達たちのおしゃべりを遮るには十分すぎるほどであった。

舞浜の瀟洒なホテルのオープンスペースで執り行われた人前結婚式は、ディズニーランドへ来たお上り修学旅行生から、ポップコーンバスケットを下げた家族連れ、多種多様のカップルまで巻き込んで,にぎやかに、そして楽しく粛々と進んでいった。

あっけなく二人の誓いの握手【チューではないのだ(?へ?)】で終わったその式は、また友人達の伝説として長く語り継がれることであろう。

式が始まる前に、昼食で大酒をあおった我々は、すでに良い気持ちとなり、一緒に参列していたO君などは完全にできあがっていた。それでも披露宴を待つ間、水割りを離さない我々は、気持ちも大きく、また前頭前野の働きが微弱になり涙もろくなっていたのかもしれない。
仲人を立てないその披露宴は、新郎の挨拶から始まった。

「皆さん、本日は、お忙しいところ、ご参列いただきまして本当にありがとうございました。本日の私たちがこうして、このような式を迎えられましたのは、ここにいる皆様のお力があってこそです。今日は、美味しいものを食べて飲んで、楽しんでいって下さい。」たったこれだけの短い挨拶だったような気がしたが(酔っぱらっていたので正確ではないのだ)、新郎の心意気がしみじみと伝わってきて、会場が大きな拍手で包まれた。

主賓のありがたい挨拶のあと、披露宴は二人が独身生活にピリオドを打つ儀式で、会場を仰天させ笑いの渦に巻きこんだ。乾杯のあとは、つまらない祝辞も余興も一切排除し列席者は自由に席を飛び回り、料理に舌鼓をうち、お酒を飲みながら会話を弾ませていった。みんなニコニコわくわくしているので、会場全体が膨らんでいるような錯覚に襲われた。

乾杯の挨拶を担当した私の元に、S君のご両親が涙を浮かべて挨拶に飛んでいらした。話を聞くほどに、愛情に包まれて育まれてきた彼の半生と深い家族の絆を感じ、美味しいシャンパンでゆるんだ前頭前野が容赦なく感情失禁へと導くのであった。

宴もたけなわ、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。キャンドルサービスのあと、会場が暗くなりS君が徹夜で自主制作した「OUR HISTRY」というビデオが流れ始めた。BGMはとっても素敵だったけどS君の幼少の写真の顔が、今とほとんど変わらなくて2枚目からもう笑えた。

楽しかった子供時代からこれまた楽しかったという学生時代へと画面の中のS君はどんどん成長していく。楽しかった時代が終わり、氷河期の学生時代末期になると、そのころお世話になった恩人達が画面に登場。ここら辺の構成は、S君の心根を感じさせられ、美味しいワインも加わりまた感情失禁(+)。時代はどんどん進み入職した歓迎会、そしてなんと、うちの言語室が大写しに。
「おお、こうして見るとうちも外見はなかなかじゃないか。」ちょっと嬉しくなった私。
そうこうしているうちに『STの僕を支えてくれた恩人』という画面テロップの下に私のこの頃太ってきた丸い顔が・・・。「私?」

画面が変わり言語室の前に立つ私たちの画像に『・・・この仕事が好きになりました』というこの言葉でS君の分のビデオは終わっていた。

「先生、俺、泣いちゃったすよ。先生も泣いちゃったっすよね。Sさん最高っすよ。人生の大きな岐路だったんっすよ!先生への感謝の言葉ですよ。」

披露宴が終わってからも、ずっと興奮してこう繰り返していたO君の言葉に
「酔っぱらっていてよく見ていなかった。」と答えて、大ひんしゅくを買った。O君、ごめんなさい。本当はちゃんと見ていたの。胸が一杯になっちゃって、号泣しそうだったからとぼけていたの。この場を借りて謝ります。

S君は仕事を辞めようかと悩んでいたらしい。そういった悩みがあったことを知っていたから、この言葉にぐっと来ちゃった。そうか、好きになっちゃったのかってね。
S君の挨拶もビデオも、彼の成長がとっても伝わってきて胸にじんじん来ちゃったの。一緒に頑張ってきた甲斐があったねって。臨床家って良いよね。言語聴覚士って良い仕事だよねって。

育てるとか指導するなんてレベルじゃないけれど、一緒にやってきて良かったって、しみじみ思ったの。自分の仕事って本当に良いなって実感した瞬間でもあったの。
だから感謝すべきなのは、あなた方ではなくて私自身なのだって気がつかせてもらったの。これからもみんな、こんな私ですがよろしくね。

翌週、O君の強い提案で、私のPCにそのビデオをコピーされてしまった・・・。
これからはきっと、私が仕事に疲れたときや、行き詰まったときにこっそりそれを見れば、元気になれるだろうと思っている。
 
人との縁って本当に素敵で不思議だ。みんなに感謝!
そしてS君素敵な結婚披露宴に呼んで下さってありがとう!

  1. 2011/04/03(日) 09:57:15|
  2. エッセイ

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