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33. 世界のバランス -エッセイ

「世界のバランス」
 行ってきました。東京国際映画祭へ。毎年この時期に開催されるアジア最大の 国際映画祭です。
 世界で最初に公開される作品や、たくさんの映画スターや監督が来場するイベ ントが行われるため、かなりの盛り上がりを見せます。 そんな中私の楽しみは、 この映画祭でしか観られない(一般公開されることがない)作品に出会うこと。  今年はイランや台湾、エストニアの作品などを観ることができました。 その中で印象に残ったのがベトナム映画の中に出てきた言葉がありました。 簡単にストーリーを紹介すると、主人公は、本当は想いあっているのに身分の 違いから結婚できない二人の男女。男は出世のため、母親のために、社長の 娘と結婚させられることになり、女はそんな男の前から去り、歌手になる夢を 追いかけます。そして彼の結婚式当日、偶然にも歌手として彼女が舞台に登場、 思わぬ形での再会。が、すでに生きる世界が遠すぎる二人は言葉を交わさずに 別れます。彼女が帰ろうとすると、そんな二人の関係を何も知らない、高価な ウェディングドレスを着た新婦が彼女に御礼を言いに来ます。 「今日は私たちのために素敵な歌をありがとう」と新婦、 「とっても綺麗。ドレスもなんて素敵・・・。」と彼女、 「あなたも着れるわ、きっと似合う。」と言う新婦に彼女は、 「私はそんな素敵なドレスは着れない、そんなことしたら世界のバランスが崩 れてしまうわ」と言い、雨の中を走り去ります。『世界のバランス』?なんて かっこいい言葉なんだろう・・・。しびれました。お金や地位がないことに卑屈に なるのではなく、自分を守るために自分で作り出したプライドを持って強く生きる 人の心を感じた気がしました。自分の中の「世界」、自分のごく身近な生活の 「世界」、日本という「世界」、世界という「世界」。たくさんあるこの「世界」の中で、 私はどこにいて何をして、どんなバランスをとってるんだろう。映画を観た後、 そんなことをぼんやり考えて歩いていると、すぐ横を背の高い、とてつもなく 美しい女性が歩いていました。通行人みんながその美しさに振り返るほど。 こんな人ってほんとにいるんだー、気持ちいいだろうなあ、でも金かかってるんだろうなあなんて思いつつ、
私もしっかり見とれました。そしてその女性が見えなくなった後、 同じビルにある美術館にいこうと階段を上がっていく途中、窓の外が何やら賑やかに。 下を見ると、沿道に黒山の人だかり。たくさんの映画俳優や監督がレッドカーペットを 歩き、記者会見、写真撮影などをしているところでした。そしてふと見上げると向かいの ビルの巨大スクリーンに、さっきとなりを通り過ぎていったあの美女が!フラッシュを 浴びてレッドカーペットを歩いてる!女優だったのか・・・。さっきまであんな近くにいた、 同じ空気を吸って、同じ景色を見て、同じ「世 界」にいた人が、すんごい遠い、そしてデカイ。 あ、でも、これだ・・・。あの人はアッチに行って、私はココに居て、「世界 のバランス」がとれてる、そう考えるとなかなか悪くないな。なんだかちょっと しあわせな気持ちになって階段の続きを上りました。こんなオマケがあるから映画、 やめられません。
  1. 2011/04/04(月) 09:06:33|
  2. エッセイ

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